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前日の余裕とは打って変わって、
打ちのめされた後のような疲労困憊具合である・・・
午後からの引越しってのは、
朝早くから叩き起こされないで済む分、
引越し後の片付けが深夜に及ぶし、、、
いや、これは単に最低生活環境を確保するためだが、
それでも作業は深夜に及ぶのである。
海外に行くのに、飛行機は朝便か夜便なのか。
いや、着いてからが重要、夜に着くなら、
換金できるのか、ホテルには行けるのか・・・
こんな選択と似たようなものか。
午前中、すでに一戦こなして来た猛者が、
スッパイ匂いと、冬なのに背中が燃えるような湯気、
ドスの効いた声で、ギラギラした目で、
高い位置から荷物を嘗め回し、
「ふっふっふ、猪口才な・・・」と言う。
こんな彼らを想像していたのに、
到着した引越しのお兄さんたちは、華奢でスマート、
ニッコリ笑う白い歯は、さらにスイート!
こんなジューシー・フレンズが、
私の手塩にかけた強固な荷造りダンボールを
しっかりと運んでくれるのかと、
疑いの眼差しで目を細めながら、
メガネの縁を持ち上げた私だったが、
一気に始まった彼らの仕事っぷりに、
唖然とし、口が塞がらないばかりか、
顎も外れそうだった。
20kgあるダンボールを2つ重ね、手で横から掴み、
まさに「ヒョイ」という音と共に持ち上げるのである。
ヒョイヒョイと運び、みるみるトラックに移動!
あまりの往復の早さに、
階段の途中から投げているんじゃないかと、
違う階段からそうーっと覗くと、
投げることも、ぶつけることも無く、
ニコニコと運んでいくのだ。
しかも、上ってくる度に、会話を絶やさず、
常にクライアントを上機嫌にさせてくれる。
少し暑くなったのか、腕まくりした下からは、
ターミネーターの腕みたいなものが見え隠れして、
体の剛と、精神の柔を使い分けながら、
一切の無駄な動きなく、仕事をこなしていく。
マシーンか・・・!
4人で来ていたのは解ったのだが、
2人は、下でトラックに運び込んでいるので、
実際には若手2人で往復しているのだ。
ものの30分でダンボールは完了!
良く考えると、100個あったので、
2人で2個ずつ運んでも25往復である。
普通に昇降しただけで息が切れるのに・・
と、呆然としていると、家具を梱包しはじめた。
これは2人で息を合わせて、、、と思ったら、
1人で担いでいる。
マシーンだ・・・。
程なく、積み込み移動して、
今度は荷下ろし。
これもやはり唖然としているうちに終わったのだ。
この方、やはりニコニコと冗談を言いながら・・。
終わって、トラック見れば、アルミの荷室の側面に、
「テレビチャンピオン優勝」の文字!
そうだ、そうだ、と前に見た番組を思い出したら、
「これ今日のチーフですよ」と、マシーン2号。
なるほどなるほど・・・
引越し屋さんとは、単なる物運びに非ず。
これはひとつの職人芸であり、
エンターテイメント・ショウなのだ!
マシーンに見えたのは、精進し鍛え上げられた、
肉体の権化であり、素人には見破れない、
素晴らしいトランスポート芸術なのである。
完成されたソロのテクニックは、舞台マナー、
挨拶さえも最高であった。
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